21/12/10に特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議(第46回)が開催されました。写真・ビデオの撮影等は今回もマスコミ・傍聴者は禁止されました。
・21/12/10 特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議(第46回) 配付資料
・21/12/10 特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議(第46回)
名古屋市民オンブズマンによるメモ
はじめに、松雄俊憲・観光文化交流局長が「約3年間観光文化交流局長を務めてきたが、21/12/16から副市長に拝命されることとなった。
名古屋城木造復元事業については、文化庁指摘事項、石列毀損事故の対応で有識者の皆様に大変ご指導を頂いた。
副市長になっても引き続き木造復元事業に取りくむ。
石垣保存方針、基礎構造、バリアフリーなど懸案はあるが、来年度末目途に復元原案を取りまとめたい」と挨拶して退席しました。
議題としては、今回も名古屋城木造復元事業については一言も触れませんでした。
議題は二之丸庭園整備計画、本丸搦手馬出周辺石垣の修復についてです。
2004年度から解体を始めた本丸搦手馬出周辺石垣ですが、2018年度にようやく解体を終え、2022年度から2026年度にかけて積み直しを行う予定です。
現在石垣・埋蔵文化財部会で詳細な検討を行っており、積み直し基本方針を策定中ですが、過去7か月、全体整備検討会議に報告してなかったため、中間報告を行いました。
その中で、地震時の安全性確保のため、「ジオテキスタイル」と呼ばれる現代工法を用いて石垣を安定させる方針が示されました。
三浦正幸・広島大学名誉教授は「安全性を高めるため、裏込層でジオテキスタイルを入れる方針とのこと。実験では有効だと聞いた。
ジオテキスタイルの耐久年数を教えてほしい」としたところ、名古屋城総合事務所は「材料の選定まで進んでいない。今後耐用年数を調べて報告する」としました。
三浦名誉教授は「有機物は石より寿命が短い。20-30年程度なら気休めにしかすぎない。石垣は100年単位の寿命。入れることに反対するわけではないが、ずっと安全と誤解しては困る」としました。
座長の瀬口哲夫・名古屋市立大学名誉教授は「『真正性が保てる』とあるが、石垣を解体していろいろ入れる方針だ。
どういう意味か。『真正性』という言葉が安易に使われているのではないか。これだけ新しい工法を付け加えても、『真正性』という場合もあるのか」としました。
名古屋城総合事務所の鈴木昌哉保存整備室長は「材料的には置き換わるため、その面で言えば伝統的なものはない。
石垣の全体的な工法では、形状的なものは記録を再現したいので、それを『真正性を確保したい』と述べている」としました。
瀬口座長は「『私たちがこう思う』ではなく、ユネスコの定義があるので、基準を変えてはいけない。
定義からすれば、ここでは使えないのではないか。これが通るならなんでも世界遺産が通ってしまう」としました。
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「オーセンティシティ(真正性 Authenticity)に関する奈良ドキュメント」は、文化財の価値と信憑性をより客観的に評価するために、保全に関連する文化的多様性と文化遺産をより広く理解する必要性に対処する文書です。
「世界遺産条約履行のための作業指針」では以下述べています。
文化遺産の種類、その文化的文脈によって一様ではないが、資産の文化的価値(登録推薦の根拠として提示される価値基準)が、下に示すような多様な属性における表現において真実かつ信用性を有する場合に、真正性の条件を満たしていると考えられ得る。
・形状、意匠
・材料、材質
・用途、機能
・伝統、技能、管理体制
・位置、セッティング
・言語その他の無形遺産
・精神、感性
・その他の内部要素、外部要素
搦手馬出石垣は修復後、来城者が石垣の上に登って観覧する予定です。
地震時の安全性を確保する必要があります。
現在名古屋城木造復元事業を名古屋市が強引に進めようとしていますが、地震時の安全性を確保する必要があります。
そうすると、本丸搦手馬出周辺石垣と同様、真正性の議論が出てくるのではないでしょうか。
天守閣木造復元事業について、地震時の安全性を確保して進めるということを、名古屋市民がどこまで理解しているのでしょうか。
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・名古屋市民オンブズマン 名古屋城問題ページ