21/3/25午後、特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 天守閣部会(第23回)が開催されました。
・21/3/25 特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 天守閣部会(第23回)
配付資料
http://nagoya.ombudsman.jp/castle/210325-2.pdf 名古屋市民オンブズマンによるメモ
http://nagoya.ombudsman.jp/castle/210325-2-1.pdf 2019年9月に文化庁から4つの指摘事項が出されており、名古屋市はそれに回答しない限り、次の段階に進めませんでした。
名古屋市は、回答を作成するために各種調査をしてきました。名古屋市は「指摘事項への回答について、事前に資料を文化庁に見せたところ、『このままでは細かすぎ、ボリュームが多い。一問一答形式で回答してほしい』と指導をいただいた」としました。
麓和善・名古屋工業大学大学院教授は「指摘事項への回答には、『天守台石垣の被熱と劣化に関し、仮設物設定前に保存を行う。令和3年夏ごろに石垣保存方針を作成し、石垣補修を行う』とある。表面被熱劣化への対応は結構難しい。一個づつの石ごとに検討しないといけない。『令和3年夏ごろ』と明確に回答するのがよいのか。本当にできるのか。補修をやってから仮設工事に取り掛かるので良いのか。
時間が短すぎる。これだけの面積なのでかなり時間がかかる。全部補修したうえで工事に取り掛かることが必要なのか疑問に思う。『石垣の保存方針を検討する』くらいではダメか。『修理する』と言わないと、文化庁への回答が成立しないか」としました。
名古屋城総合事務所は「今年夏ごろをめどに石垣保存方針を作成したい。石垣表面の補修については、内堀保護工でかぶる部分はさきにやらないといけない」としました。
麓教授は「石垣部会の議論を踏まえると、時間がかかる気がする」とし、名古屋城総合事務所は「ご心配な点は分かるが、方針として示す必要はあると思う」としました。
三浦正幸・広島大学名誉教授は「麓先生の懸念はごもっとも。『被熱によって表面がはがれかかった石材は、必要措置を講じる』と限定修飾語を用いてはどうか。記載の通りだと、自らの首を絞めるようなもの。天守閣石垣の表面の被熱と劣化をすべて直すと、それだけで5年くらいかかりそう」と述べました。
村木副センター長は「現時点で、どの段階でどのレベルの補修をするか、具体的な検討はできていない。しかし直接内堀保護工に触れ、剥離してしまうところは事前に対応する必要がある。記述の仕方は検討したい」としました。
古阪秀三・立命館大学客員教授は「ここまで遅れた。文化庁のルールは何か。どういう審査員、指導員がいるのか。文化庁は何をやっているのか。このままでは木造復元を我々は天国から見ているかもしれない」としました。
佐治所長は「天守閣部会からのご指摘は前向きに検討したいが、21/3/30に開かれる全体整備検討会議には時間がないため、同じ文面で出したい」としました。
座長の瀬口哲夫・名古屋市立大学名誉教授は「本日の指摘を踏まえて文化庁に提出してほしい。私が修正を確認する」としました。
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同じ21/3/25に開催した2つの部会で、午前中に開かれた石垣・埋蔵文化財部会では『遺構保存を徹底する』としたにもかかわらず、午後に開かれた天守閣部会では「天守台石垣の表面については、必要な措置を講じる」とまで表現が後退しました。
天守台石垣の表面は戦災の被熱で極めてはがれやすくなっており、ちょっと触るだけでボロボロ落ちてくることがあります。
プラスチックを利用した軽量盛り土は軽いため、堀底の石列等遺構に対する影響は「軽微」と解析結果がでたとのこと。
しかしながら、軽量盛り土が天守台石垣に触れると、ボロボロはがれる可能性があります。
「その補修を徹底する」と石垣部会は午前中に了承したのに、午後の天守閣部会では「必要な措置を講じる」に後退する意見が出ました。
今後、どのような文言が文化庁に提出されるかわかりませんが、文化庁が「必要な措置を講じる」で、現天守閣解体の現状変更申請を認めるかわかりません。
三浦名誉教授が述べたように「天守閣石垣表面の補修を徹底すれば5年かかる」のです。
それ以降しか、現天守閣解体のための足場を組むことはできません。
2028年ごろの木造復元など夢のまた夢です。
せっかく2つの部会が同じ会場に集まったのだから、午前と午後にわけるのではなく、どうして同時に開催して意見を交換しなかったのか、理解に苦しみます。
堀底石列に続き、天守台石垣表面の補修方法も今後確実に焦点になります。
市民や議員、マスコミがどこまでこの問題を理解しているのか。名古屋城木造復元への道ははるかかなたです。

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名古屋市民オンブズマン 名古屋城問題ページ
http://www.ombnagoya.gr.jp/tokusyuu/goten/index.htm