17/11/21、愛知障害フォーラム(ADF)の電動車椅子メンバー4人と支援者は名古屋城総合事務所を訪れ、名古屋城木造復元天守にエレベーターを設置しない方針を示した名古屋市に対して公開質問状を提出し、意見交換を行いました。
・17/11/21 愛知障害フォーラム(ADF)
名古屋城木造天守復元におけるバリアフリーに関する公開質問状
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/171121.pdfADFから名古屋市民オンブズマンに対して取材のお願いが届き、名古屋城内の会議室で行われた意見交換の場に同席しました。
(会議室入室にあたって、名古屋城総合事務所の許可も得ました)
・17/11/21 名古屋市民オンブズマン作成メモ
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/171121-3.pdf・意見交換終了後の西野所長ぶら下がり記者会見
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/171121-4.pdf 簡単に言えば、以下の通りで平行線をたどりました。
・ADF「筋力が弱く、チェアリフトに乗れない障がい者がいる。スカラモービルに乗れない車椅子も多い。これらはエレベーターの代替案にならない。」
・名古屋市「今回は案。全ての人を安全・安心に登っていただくため、今後皆さまの意見を聞いて検討する」
唯一目新しいことは、西野輝一・名古屋城総合事務所所長が「木造天守閣の設計を年度内に詰めていかないといけない」と発言したことです。竹中工務店との基本設計完成期限が2018年2月末であるためだと思いますが、根拠はよく分かりません。
・名古屋城天守閣整備事業に関する基本協定書
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/170509-1.pdf・名古屋城天守閣整備事業基本設計その他業務委託 契約書
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/170509-2.pdf ADFの辻直哉事務局長は「電動車椅子は120キロ。乗る人も含めると200キロ近くになり、エレベーター無しで安心・安全に移動する手段をあと4ヶ月で技術開発出来るとは到底思えない。
本日の話し合いはゼロ回答だ。何も示してもらえなかった。
昔の姿の天守閣が復元されるのは関心があるが、現状では一部の人を『排除』しているように思えてならない。
名古屋市は現在の天守閣のエレベーター利用状況も把握していない。
チェアリフトは1階上がるのに1人5分かかるというが、私たち4人が5階まで行くのに何分かかるのか。
特別支援学校が観覧した場合もまともに検討していない。
現在の天守閣部会有識者は文化財の専門家ばかりであり、バリアフリーについては資料が2枚だけで10分しか議論しておらず、強引な部会だ。ユニバーサルデザインの専門家は一人も入っておらず、今後どのように話を聞くかも明確な回答がなかった。
名古屋市の内部の健康福祉局の担当者にも話をしていない。
木造にすると階段の1段1段が高くなり、高齢者も階段を上りにくくなる。
私たちはよく海外から来たお客さんを名古屋城に案内する。現状では外のエレベーターから天守閣に入ってきて、内部エレベーターで5階まで行ける。しかし現状では展望室まではエレベーターで行けなくてがっかりする。今後展望室までエレベーターがついたらよい」と述べました。
別のADFメンバーは「簡単に『エレベーターをつけない』という結論を出せる人がこの世にいるのだなと思い、がっかりした」と述べました。
辻事務局長は、会議開始前「以前、名古屋城本丸御殿に入ったことがある。『備え付け車椅子に乗り換えて欲しい』といわれたが、乗り換えると怪我をする。結局自分の電動車椅子のタイヤを拭いて入った。電動車椅子から下ろされるのは『自分の足を外せ』と同じだ。」と述べました。
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上記に先立ち、17/11/20に河村たかし名古屋市長の定例記者会見がありました。
・平成29年11月20 日 名古屋市長河村たかし 定例記者会見
・上記メモ(名古屋市民オンブズマン作成)
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/171120-3.pdf河村市長は、ロボットの専門家である和歌山大学の中嶋秀朗教授に市職員が相談し、「難しい課題だが研究している」と発言しました。
http://wakarid.center.wakayama-u.ac.jp/ProfileRefMain_2394.html河村市長は「某新聞に載っていたことを言ったことは一言もない。必ず喜んでいただけるよう最高の技術を開発しようや。僕は『福祉団体に言わないけない、福祉団体と相談しないと』と言っていた。憤懣やるかたなし。」と部下に責任転嫁しました。
その上で「まだ四・五年ある。」を繰り返し、竹中工務店との基本設計契約のことを無視あるいは軽視する発言をしました。
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そもそも、名古屋城木造天守閣の形を具体的に検討する部会は、天守閣部会とは別に作る、という話もあったはずです。
そのルールが曖昧なまま、名古屋市・市長の一方的な思い込みだけで突き進んでしまっています。
また「2022年12月までに完成させる」と決めたのは河村市長であり、何の根拠も必然性もありません。
また、バリアフリー法には、木造天守閣が適用除外になれる条文がないように読めます。
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/index.html(参考)
・平成29年 3月 25日 国土交通省 住宅局 建築指導課
歴史的建築物と建築基準法について
http://h-ar.net/cms/wp-content/uploads/2017/03/20170325_HARNET4th_mlit-1.pdf現在の名古屋城は、地下1階~7階まで階段が173段あり、かなりの人が23人乗りの内部エレベーター2基で5階まで登ります(5階から7階は44段の階段)。
18階建てのビルに相当するとのこと。
505億円かけてエレベーターのない木造天守閣(耐震・防火のため『寸分違わぬ名古屋城』ではない)を障がい者・高齢者を排除する形で作るのがいいのか。
約29億円かけて現天守閣の耐震改修・展示物のリニューアル・長寿命化・展望室までのエレベーター設置をするのがよいのか。
焦っているのは名古屋市だけです。
2018/2末に発表される「木造復元に向けた調査業務委託」で収支予測・来場者見込みを見た上で、保存活用計画案のパブリックコメントを行って市民の意見を十分聞いてから判断しても遅くはないのではないでしょうか。
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名古屋市民オンブズマン 名古屋城問題ページ
http://www.ombnagoya.gr.jp/tokusyuu/goten/index.htm↑名古屋城エレベーターの前で語る、愛知障害フォーラムの辻直哉事務局長
↑外のエレベーターに入る辻事務局長
↑名古屋城内会議室に入るための石畳に苦労する、ADFメンバー
↑公開質問状を手渡す、ADFメンバー
↑名古屋城総合事務所と話し合う、ADFメンバー
↑名古屋城と本丸御殿を背景に思いを語る、ADF近藤佑次事務局員
↑天守閣内部エレベーターで5階まで上ってこれると訴える、ADF近藤佑次事務局員
↑5階階段の前で、「展望階に登れない」と訴える、ADF近藤佑次事務局員
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↑本丸御殿は車椅子でも見ることが出来ます。(しかし、中で備え付け車椅子に乗り換えるよう言われます)
↑本丸御殿内部。車椅子でも移動できます。
↑本丸御殿内部。外が曇っていると相当暗く、電気の明かりが必須です。