15/9/27に仙台市民オンブズマンはフォーラム「本当に必要なの?その政活費」を開催し、約40名が参加しました。
・配布資料
http://sendai-ombuds.net/seimuchousahi/2015/10/post-51.html
まず、仙台市民オンブズマン 事務局長の畠山裕太弁護士が、宮城県議会の政務調査費(平成24年度)の実態を詳しく発表しました。
全国に先駆けて「会派にいったん政務活動費を支払い、議員は会派のチェックを経たのち会派で精算する『精算払い制』」を導入した宮城県議会では、これまで
同様でたらめな使い方がなされていたことが判明しました。
続いて、政務活動費をチェックする第三者機関についての調査・報告を、石上雄介弁護士が行いました。第三者機関を持つ全国12議会に対してアンケートを行うとともに、地元オンブズに評価を行いました。
石上弁護士は第三者機関を4パターンに分けました。
1)法律相談パターン 川崎市・広島市
2)外部委託パターン さいたま市・熊本市
3)補佐機関パターン 大阪市・金沢市・堺市
4)諮問機関パターン 鹿追町
しかしながら、いずれも支給額に対する使った割合である「執行率」は減っておらず、問題支出や二重計上が見逃されていることが判明しました。
また、議員の説明をうのみにすることが多かったり、北海道では政党に委託した支出も見逃されていました。
それら原因としては、以下3つの原因をあげていました。
・調査は労力がかかる
・性善説に近い立場
・内部チェックに問題。議員はなめきった態度
上記から、「誰かに任せるのは期待してはいけない」と結論づけました。
次に、領収書等をネット公開することについて、畠山裕太弁護士が報告しました。領収書を情報公開請求して紙で入手すると数十万円かかってしまい、現実的ではありませんが、ネット公開だといつでもだれでも見ることができ、しかも行政のコストもほとんどかからず、導入は極めて容易としました。
現時点で都道府県レベルでは高知県・大阪府、中核市では函館市・大津市が領収書を公開していること、その他市では少なくとも24自治体で公開していることを報告しました。
・都道府県
高知県
http://gikai.pref.kochi.lg.jp/member/investigation.html
大阪府
http://www.seikatu.pref.osaka.lg.jp/
・中核市
函館市
http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2014031300747/
大津市
http://www.city.otsu.lg.jp/gikai/kokai/seimu/kokai/index.html
・その他市一覧(市民オンブズマン兵庫調べ)
北海道登別市
http://www.noboribetsu-shigikai.jp/seimu-chousa/index_seimu-chousa.htm
福島町
http://www.gikai-fukushima-hokkaido.jp/gikai-kasseika(2).html#4seimu-tyousahi
鹿追町
http://www.town.shikaoi.lg.jp/machizukuri/gikai/seimuchousa/26seimu-report
山形県川西町
https://www.town.kawanishi.yamagata.jp/gikai/seimukatudouhi.html
福島県須賀川市
http://www.city.sukagawa.fukushima.jp/3390.htm
茨城県常陸太田市
http://www.city.hitachiota.ibaraki.jp/sp/page/page002206.html
埼玉県富士見市
http://www.city.fujimi.saitama.jp/10shigikai/05koukai/2013-0521-1051-63.html
ふじみ野市
http://www.city.fujimino.saitama.jp/doc/2014101600074/
三芳町
https://www.town.saitama-miyoshi.lg.jp/gikai/seimutyousahi.html
嵐山町
http://www.town.ranzan.saitama.jp/category/6-4-2-0-0.html
杉戸町
https://www.town.sugito.lg.jp/cms/index935.html
東京都立川市
http://www.city.tachikawa.lg.jp/gikaijimukyoku/shise/shigikai/katsudo/semu/index.html
三鷹市
http://www.gikai.city.mitaka.tokyo.jp/member/expenses.html
神奈川県大和市
http://www.city.yamato.lg.jp/web/gikai/seimutyousahi2006.html
箱根町
http://www.town.hakone.kanagawa.jp/hakone_j/ka/gikai/page000086.html
福井県小浜市
http://www1.city.obama.fukui.jp/obm/gikai/seichou02.htm
愛知県刈谷市
https://www.city.kariya.lg.jp/shigikai/shigikainitsuite/seimukatudouhi.html
尾張旭市
https://www.city.owariasahi.lg.jp/sisei/sigikai/seimu1.html
奈良県天理市
http://www.city.tenri.nara.jp/kakuka/gikaijimukyoku/shigikai/money/
島根県浜田市
http://www.city.hamada.shimane.jp/www/genre/1100000000001/1000270010021/index.html
益田市
http://www.city.masuda.lg.jp/soshiki/2/detail-17223.html
福岡県宗像市
http://www.city.munakata.lg.jp/w034/050/080/0930/201501270001.html
熊本県八代市
http://www.city.yatsushiro.kumamoto.jp/list/list_sub.phtml?paid=120210
水俣市
http://www.city.minamata.lg.jp/1490.html
パネルディスカッションでは、全国市民オンブズマン連絡会議 事務局の内田隆氏が、15/9/5-6に神戸市で開催した第22回全国市民オンブズマン兵庫大会で実施した、「政務活動費 うっとこはこんなにひどいコンクール」を行った目的を発表しました。
http://www.ombudsman.jp/seimu2015con.html
2014年7月に元兵庫県議会議員の野々村竜太郎氏が号泣会見を行ったが、泣いたことが珍しいのであって、同様のカラ出張疑惑は全国で行われていたのにまたも繰り返されたのに全国事務局は衝撃を受けた。議員に「他山の石」としてもらいたく、各地のひどい事例を集めてコンテストを行った。全国の事例を眺めると、丙丁つけがたいものがたくさん集まった。最低限、議員は同様の変な使い方はしないでほしい。
また、政務活動費の開示度と執行率の調査をした理由を内田隆氏が述べました。
http://www.ombudsman.jp/taikai/seimu150904-1.pdf
2013年度から政務調査費が政務活動費にかわり、「その他の活動」が入って執行率が高くなるのではないかという懸念があり、2014年の大会から調査した。2回目となる今年の調査では、過半数の57議会で執行率が減少しており、10%以上減少したのは不祥事が発覚したところであった。
2015年度より岡山県議会でようやく1円以上領収書が公開され、基本的にすべての領収書が公開されることになった。しかし、紙で写しをとるのは数十万円かかり、ネット公開やCDでの開示が望まれる。
どうして全国各地で政務活動費のひどい使われ方がなされるのか、「共通の原因」として内田氏は以下4つをあげました。
1)渡し切り
2)「他山の石」になっていない
3)議員は市民の意見を聞かない
4)市民がチェックしにくい
次に、仙台市議会の政務活動費について調査報道をされた、河北新報記者の若林雅人氏は、「本年度これから改選を迎える東北6県の114市町村議会で政務活動費(政活費)を交付されているのは岩手、宮城、山形、福島4県に37市町村議会あったが、議員提案の政策条例を制定するのは5市村のみであった。また、月5000円支給が9市町村に対し、仙台市は月35万円支給されている。」としました。
宮城県議会では2009年3月に政務調査費改革をしたにもかかわらず、このようなでたらめな使い方がまかり通っているのはなぜなのか、仙台市民オンブズマンの庫山恆輔氏が歴史的経緯を説明しました。過去に交通費の「簡便計算方式」に対して住民訴訟をしてきたが、その和解の条件として改革を進めることを約束した。宮城県議会は形だけは改革したが、中身をひっくり返された。
改革案として、第三者機関を導入することは、第三者機関のマンパワーを考えると十分にチェック機能を果たせるか疑問があるとしました。その上で、監査委員によるチェックについて、庫山氏は「独立性も専門性もなく、全く期待できない」と述べました。
内田氏は「制度的には、個別外部監査と包括外部監査がある。住民監査請求時、個別外部監査を要求できるが、監査委員が同意しないとだめで、過去4例しかない。ただ、個別外部監査のほうが監査委員監査よりはましだ。包括外部監査の対象になったのは、少なくとも過去11例ほどあり、これはまだ効果的ではあるが、包括外部監査人がテーマに選ばなければいけない。珍しい事例としては、2会派がお互いに百条委員会を開けと要求した千葉県市川市では、市長が個別外部監査を要求し、全会派に返還勧告がでた。本来は議長が調査権限を持っているがほとんど行使していない。市長や知事がきちんと権限を行使すれば調査可能だ」としました。
議員の意識について、若林氏は「議員に聞くと、『議員として行う活動全てが調査研究』とのこと。海外視察は『百聞は一見に如かず』という。議員の裁量が広すぎるのではないかと聞くと、『国会議員の立法事務費のほうが1人当たり月65万円と金額も高いし領収書を公開しなくてよく、政務活動費のほうがまだましだ』というものだ。」としました。
内田氏は、そもそも領収書に記載している個人名が非公開なのがおかしいとしました。全国調査では、領収書の全面公開が政令市では3市(神戸市・岡山市・熊本市)、中核市で8市あり、他の議会でもできないことはない。愛知県議会では、誤ってある議員の人件費の相手方が公開された。後日中日新聞は、その人に対して半額しか議員が払っておらず、残りをプールして「次の選挙までに1000万円貯めたいから協力してくれ」とメールを打っていたことをスクープした。毎日新聞は、別の愛知県議が親族に人件費を払っており、ほぼ同額を当該県議に政治資金として寄付をしていたことをスクープした。
今回神戸市議会で個人に対して架空の委託をしてプールした金を選挙対策費として分配していたことが判明したが、これは神戸市議会では個人の支払い先まで公開しているためにわかったことだ。不正をさせないため、説明責任を果たさせるために人件費など相手方の氏名をすべて公開すべきとしました。
また、内田氏は、名古屋市民オンブズマンとして議員活動と政務活動費の関係を調査したと発表しました。
http://www.ombnagoya.gr.jp/tokusyuu/seimutyousahi/index.htm#151001
政務活動費を4年で2200万円以上支出しておきながら、4年間で委員会発言が2回、5回という議員がおり、議会活動以外に使っていた疑惑がある。また、人件費と事務所費を多く使った議員のほうが上位当選しやすいという傾向があった。その上で、ネット公開はもちろん、市民による使途の事前チェックを踏まえた完全後払い方式を導入すべき。
最後に、庫山氏は「市民が監視しているかどうかは議員はよくわかっている。だれでもチェックできるネット公開しかない」としました。
若林氏は「福島県内で政務活動費を詐取して逮捕された議員は、『冠婚葬祭費に使った』とのこと。仙台選出の国会議員は、地域の祭りに対して他の議員も出すから会費を出さざるを得ないとのこと。有権者側に、議員に金をかけさせる風土がないか問わなければいけない」としました。
内田氏は、「政務活動費の公開度を高めるため、情報公開度ランキングを検討している。また、私は東日本大震災後、仙台に年1回ペースで来ており、着々と復興が進んでいると思うが、復興に地方議員が果たした役割はあったのだろうか。単にでたらめな使い道をなくす、というのではなく、『政務活動費があってよかった。
使ってよかった』というものなのかを問わなければいけない。議員の中には市民オンブズマンに対して『議会制度を破壊する』という偏見を持っている人もいると聞くが、議会での議論をを活性化させるための政務活動費にしたいと思っている」としました。
また、仙台市民オンブズマンは、15/10/25投開票の宮城県議会議員候補者に対してネット公開についてのアンケートを行うと発表しました。
http://sendai-ombuds.net/seimuchousahi/2015/10/post-48.html
最後に、参加者一同が「政務活動費のインターネット公開を求めるアピール」を採択しました。
http://sendai-ombuds.net/seimuchousahi/2015/10/post-51.html
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・全国市民オンブズマン連絡会議 政務活動費特設ページ
http://www.ombudsman.jp/seimu.html
・仙台市民オンブズマン
http://sendai-ombuds.net/
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↑宮城県議会の政務調査費の実態を発表する、畠山裕太弁護士

↑パネルディスカッションの様子

↑全国調査を踏まえた報告を行う、内田隆氏

↑「議員の本音」を語る、若林氏

↑仙台市民オンブズマンの政務調査費・活動費追及の歴史的経緯を語る、庫山氏

↑領収書のネット公開が効果的と語る畠山氏