2005/10/26本日、名古屋高裁で名古屋デザイン博住民訴訟の
差戻判決があり、名古屋市民オンブズマンは敗訴しました。
今後上告を検討する予定です。
89年に名古屋市が中心となってデザイン博を開催しましたが、
経費がかさんで、実質上は赤字でした。運営主体のデザイン博協会の
余った物品(ゴミ箱から仮設ステージまで約4000点)を名古屋市が
約10億3000万円で買い取り、結果的にデザイン博協会は
約2億1000万円の黒字となりました。
名古屋市民オンブズマンは、1.目的の不法、2.双方代理の禁止違反、
3.随意契約によった違法、4.議会の議決を経なかった違法、5.代理
権限を有しないものが代理した違法を主張して住民訴訟を起こしました。
1審ではオンブズマンの主張が全面的に認められ、市長に対して
約10億3000万円全額の賠償を命じました。
2審では黒字分約2億1000万の賠償を命じました。
しかし、最高裁で「2審は費用の内訳を検討していない」ので
差し戻しとなった次第です。
今回の判決では、以下のように述べています。
・名古屋市とデザイン博協会との間には、実質的に見て準委任的な関係が
あったものと認められる
・準委任的な関係があったものと認められるので、デザイン博協会の
赤字分については、委託者である名古屋市において負担すべき義務が
あったと解するのが相当である
・上記のため、赤字回避のための売買契約が直ちに違法であったと評価できない
・デザイン博協会は、黒字分は名古屋市に寄付すると決議している
・総合すると、裁量権の逸脱、濫用があったとは認められない
名古屋市民オンブズマンは、この判決を受け、「準委任的な関係」と
いうのがあまりにも不明確であり、これではデザイン博協会に限らず、
外郭団体の赤字を自治体がいかなる方法でも負担することを
認めたことにならないか、という懸念を発表しました。
市議会の議決を経ずに自治体の各課がこっそり物品を購入して
赤字補填をすることを裁判所が認めたという、時代に逆行した判決です。
名古屋城会場の「本丸ステージ」は7967万円で購入し、オンブズマンの
提訴を受けて急遽改造のため9000万円をさらにかけ、現在は名古屋・
東山動物園の休憩所として使用しているという、あまりにもずさんな
やり方を認めるわけにはいきません。
デザイン博訴訟は提訴から15年経過しており、すでに長期裁判になっています。
当時は住民訴訟で市長個人の責任を追及できたのですが、地方自治法が
改悪され、まず自治体を訴えた後、自治体が個人に対し請求するという
間接請求方式になり、ますます責任追及しにくくなっています。
今後も、ますます巧妙化していく行政の不正隠しに対して追及していきたいです。
・1989/7/15-11/26 デザイン博開催
・1990/8/24 名古屋市民オンブズマンが名古屋市長に対し
約10億3600万円の損害賠償を求め提訴
・1996/12/25 名古屋地裁判決 約10億3600万円全額賠償を命じる
・1999/12/27 名古屋高裁判決 名古屋市黒字分約2億1000万の賠償を命じる
・2004/7/13 最高裁判決 2審破棄差し戻し
・2005/10/26 高裁差戻判決 オンブズ側敗訴
◆H17.10.26 名古屋高裁差戻判決
http://www.ombudsman.jp/data/nagoya051026.pdf
◆ H16.07.13最高裁判決 (最高裁判所民事判例集58巻05号1368頁、
判例タイムズ1163号142頁、判例地方自治263号31頁)
http://courtdomino2.courts.go.jp/schanrei.nsf/VM2/01CA5BA5810A3BE849256FBE00267B7F?OPENDOCUMENT
◆H11.12.27 名古屋高裁判決
http://courtdomino2.courts.go.jp/roudou.nsf/Listview01/E5B11D203150F00749256D41000A74E2/?OpenDocument
◆H 8.12.25 名古屋地裁
http://courtdomino2.courts.go.jp/roudou.nsf/Listview01/95689BB044AE8F5E49256D41000B0FC5/?OpenDocument
「赤字補てんは義務」争点 デザイン博訴訟差し戻し審 26日判決
http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/051023_1.htmデザイン博代金返還差し戻し審、オンブズマン側敗訴
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20051026i206.htm
デザイン博訴訟差し戻し控訴審、住民側の請求を棄却
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20051026STXKD027626102005.html
住民側の返還請求棄却 デザイン博訴訟
http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20051026/eve_____sya_____004.shtml
法学セミナー2005-02 弁護士が語る2004年最高裁判決 名古屋デザイン博住民訴訟
http://www.nippyo.co.jp/maga_housemi/hg0502.htm
名古屋市民オンブズマンタイアップグループNEWS
第20号 1996年12月26日
http://www.ombnagoya.gr.jp/new_body/ombuds20.htm
第79号 2000年1月11日
http://www.ombnagoya.gr.jp/new_body/79.htm
第143号 2004年8月3日
http://www.ombnagoya.gr.jp/new_body/143.htm
以上
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