17/10/13に名古屋城全体整備検討会議(第24回)が開催されました。
今回もまた、資料5-5.6は「未確定の情報が含まれている」として傍聴者には配布されませんでした。毎回、テレビカメラは冒頭の挨拶までで追い出されます。
傍聴者は録音・写真も不可です。
・傍聴者配付資料
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/171013-2.pdf・議事要旨(名古屋市民オンブズマン作成)
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/171013-1.pdf名古屋城天守閣木造化をめぐり、「木造天守閣を作る作らないにかかわらず、まず石垣の調査が必要だ」とする石垣部会と、「木造天守閣を作るには石垣を含めてどうすればよいか考える」天守閣部会との意識のずれがあり、しかもそれぞれの部会の議論が共有化されていなかったため、今回初めて両者が顔を合わせて議論しました。
開始前、それぞれの部会委員が名刺交換しているのが衝撃的でした。
冒頭で、「特別史跡名古屋城跡保存活用計画」を策定するという提案が名古屋城総合事務所からなされましたが、このことの意味を委員が誰も理解していなかったのか、質問や異論は出ませんでした。
その後、「石垣部会」と「天守閣部会」の現状報告と、各分科会から提言がなされました。
そもそも石垣部会は、平成14年度から行っている本丸搦手馬出の石垣修復を検討するために発足しており、平成18年に石垣部会と改称した経緯があります。石垣部会に「木造天守」について公式に提示されたのは今年5月です。天守台石垣の内部構造資料をはじめて見て、築城当時の石垣が残っていることに驚き、まずは調査が必要だとしています。木造天守閣を作る・作らないにかかわらず、現状の天守台石垣は劣化・老朽化しており、早急に調査し、その後どのように保全するかを検討する必要があるとしています。
一方天守閣部会は、木造天守閣を作るという方針を名古屋市が定めたために今年5月に発足した部会です。築城当時の城の様子、焼失前の城の様子などを詳細に検討しています。石垣については、「天守閣の木造復元に際し、工事が石垣に影響を与えない工法であり、その保全が確実に図られるよう対策を検討する必要がある」と提言しています。
その中で、史実に忠実な復元を図っていくが、現在の法律の中ではパーフェクトにはいかないことを認め、避難路やバリアフリー、エレベーターなど、適切な接点を見つけないといけない、としました。
その後、石垣部会の千田嘉博構成員(奈良大学教授)は、「文化庁の許可を得て策定した現在の名古屋城の全体整備計画では、 『現在の鉄筋天守を活用していく』となっている。 現状では木造天守閣は実行不可能。全体整備計画の書き換えという、 文化庁だけでなく国民に対する手続は欠くことが出来ない。」としました。
名古屋城総合事務所は、「現在、新たな保存活用計画を策定中で、文化庁とも検討している」としています。
・特別史跡名古屋城跡全体整備計画 増補版 平成24年12月
http://www.city.nagoya.jp/kankobunkakoryu/page/0000045497.html17/6/9 特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議(第6回 保存活用計画検討会)
・配付資料 会議次第など
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/170609-1.pdf・特別史跡 名古屋城跡保存活用計画 概要版
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/170609-2.pdf・資料編
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/170609-3.pdf・特別史跡 名古屋城跡保存活用計画
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/170609-4.pdf石垣部会の宮武正登構成員(佐賀大学教授)は「石垣部会に対し、新たな保存活用計画について1回も提案がされていない。本日冒頭で資料が配付されたが、その『今後の予定』を見ると、この11月に『各部会にも参考送付』としている。来年3月には策定・公表するという。石垣部会は何か言えるのか」と疑問を呈しました。
また、全体整備検討会議 副座長の丸山宏構成員(名城大学教授)は、「木造天守閣だが、復元して中身をどう使うのかの提案がほとんど出てきていない。本丸御殿は使っている。また、話を聞いていると、石垣部会と天守閣部会はもっと密に連携を取るべき」としました。
石垣部会の宮武構成員は、「現況の天守台は既に相当痛めつけられている。あるべきパーツがなく、でてはいけないところがでている。天守閣部会は、現状の石垣の上に木造天守閣を載せて耐えられるかの議論をしているが、大正時代に軍部が積み直した石垣をどうするかとか、戦後改変された石垣をどうするかなど、『あるべき石垣』の議論とコンスタントにすりあわせをしないといけない」としました。
石垣部会の千田構成員は「穴蔵内面石垣の強度をどう担保するのかが課題。地下の内面石垣が崩壊したら避難経路が失われかねない。お客さんの安全性を確保するため、木造天守閣にするしないにかかわらず議論しないといけない」としました。
上記を踏まえ、座長の瀬口哲夫・名古屋市立大学名誉教授は「天守閣部会は安全性と文化財のことを考えているが、石垣部会は安全性を考えておらず、まず調査すべき、という認識の差があることがわかった」とまとめました。
石垣部会の3名は「まったく逆だ。発言を訂正してほしい」と一斉に抗議しました。
瀬口座長は「撤回しない」とし、石垣部会によるさらなる反発を招きました。
瀬口座長は「木造天守を作るには石垣の安全性を考えないといけないが、石垣部会はそこまで議論していない」と発言しましたが、石垣部会は「そのずれではない」と抗議しました。
天守閣部会の小野徹郎構成員(名古屋工業大学名誉教授)は、
「石垣部会としては、『木造天守閣を作るために具体的にどう対処するか、調査をしていない以上答えられない』としている。当然、石垣部会も安全性を考えないで検討しているわけではない。天守閣部会は上に構造物を作るためにスタートしており、進行の違いだと思う。石垣をどうするか、壊れてしまっては文化財ではないので今後も考えていこう」とまとめました。
瀬口座長は「時間が来ました。最後混乱させて申し訳ございませんでした」といいつつ、終了後テレビカメラから逃げるように立ち去りました(動画あり)。
石垣部会と天守閣部会の議論のすりあわせもまだまだ進んでおらず、石垣調査も始まったばかり。座長の適格性も極めて疑われる中で、この11月には保存活用計画案が全体整備検討会議で承認され、12月には市議会で審議、来年1-2月にはパブリックコメント、3月には策定・公表という猛スピードで進んでいく予定を名古屋市は立てています。
今後数百年の名古屋城のあり方を、まともな議論もなくして決めていく名古屋市のあり方に疑問を持ちます。
少なくとも、名古屋城関係の有識者全員25名が一堂に会し、今後どのようにすべきかを徹底的に議論すべきではないでしょうか。
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・名古屋市民オンブズマン 名古屋城天守閣特設ページ
http://www.ombnagoya.gr.jp/tokusyuu/goten/index.htm