17/8/7、特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議 天守閣部会(第4回)が開催されました。今回も、部会の構成員に配布された基本計画書案は「未確定段階の情報で、技術上のノウハウが含まれており、傍聴者には配布しない」と名古屋市は説明しました。
・17/8/7 傍聴者に配付された資料
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/170807.pdf名古屋市は現在の名古屋城天守を壊し、2022年12月までに木造天守にする計画を立てていますが、特別史跡である石垣を一部破壊して木造天守を作る際の足場にする計画をたてており、さらに現天守を作成する際に破壊されたと思われる石垣内面の調査期間を2ヶ月しか予定しておらず、これでは木造天守ありきで石垣修復ができないと、石垣部会の構成員は全員反対しています。
・第21回特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議石垣部会の議事録(17/5/12)
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/170512-3.pdf しかしながら、17/8/7天守閣部会での議論は、石垣部会の議論をまったく踏まえず、過去の文献調査で判明したこと、ならびに耐震性能についての議論ばかりでした。
防弾壁を構造計算に入れたところ、大地震時、耐震基準 大天守 X方向で1.3倍、Y方向で1.6倍、小天守 X方向1.17倍 Y方向 0.97倍 と、ほぼ耐震性能をクリアすることになったとのこと。
また、通し柱か管柱かを、文献を精査して検討していました。
古阪秀三構成員(立命館大学客員教授・建築生産)は、「史実に基づいてどこまで復元するか。昔の名工が作ったものを復元するのが本当によいのか。力学的、デザイン的、空間的なものを組み合わせて考える必要がある。今後、気候大変動が起こり、建物へのプレッシャーが強くなる。計算機を使いながら、合理的に考えてはどうか」と発言しました。
竹中工務店はBIM(Building Information Modeling)を用いてモデル化していることを説明しました。
三浦正幸構成員(広島大学大学院教授・日本建築史文化財学)は「木材に関する史実は重要だが、構造的に不合理な場合、不合理を正すことも必要。それぞれシミュレーションして欲しい」としました。
石垣について、最後に小野徹郎構成員(名古屋工業大学名誉教授・建築学)が「遺構に配慮した工事」について少し触れましたが、「次回議論する」となりました。
この天守閣部会で、なにをいつまでに議論するのかというのが見えてきません。
BIMを見る限り、木造の構造をシミュレーションしているだけで、バリアフリー法に基づくエレベーターや消防法に基づく鉄骨の避難階段やガラスのトンネル,スプリンクラーなどは入っていません。
2017年8月末までに文化庁が「石垣調査」を認めなければ、2022年12月までの完成はできず、17/8/1に名古屋市ははじめて「工程を見直す可能性がある」と発言したと報じられました。
「400年前の木造のそのままの天守閣ができる」と信じている名古屋市民も多くいます。しかしながら、各種法律をクリアした具体的な姿は未だに見えず、石垣についても何が問題なのかを市民に直接は説明していません。「年間366万人の来城者が50年間来る」という根拠も明らかになっていません。
今回の木造化について、当初2020年7月までとしてコンペを行いました。2022年12月までの「工程を見直す可能性がある」というのではなく、再度現天守閣の耐震化か、期限を区切らない木造化どちらがよいか、というところから考え直す必要があるのではないでしょうか。
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名古屋市民オンブズマン 名古屋城天守閣ページ
http://www.ombnagoya.gr.jp/tokusyuu/goten/index.htm