2011/3/11以降開催された、原発立地自治体の地域防災計画原子力編を
策定する審議会の議事録を読んでみました。以下感想です。
1)事故の規模・避難の範囲をどうするか
2)災害弱者(災害時要援護者)の避難をどうするか
3)中期・長期避難をどうするか
があげられます。
1)事故の規模に関して、福島第一原発事故を踏まえて、
福島事故程度でよいのではないかという意見が多かったです。
また、複合災害をどの程度検討するのかが大問題です。
(青森県は、なぜか再処理と濃縮施設の事故は触れてません)
第3回青森県原子力防災対策検討委員会議事録 24ページ
http://www.aomori-genshiryoku.com/entry/file/bousai-iinkai3/gijiroku2.pdf
3)についても、福島事故が収束しておらず、避難中の方が
まだ大勢いらっしゃること、あと何年続くのかも全くわからない
ので、極めて問題です。
しかし、今回、特に重視すべきは、2)ではないかと思いました。
北海道・東北市民オンブズマンネットワークで、病院、老人施設に
アンケートを出しましたが、そこから漏れている、
『在宅介護者』をどうするのか、という問題が極めて大きいです。
上記青森県議事録 13ページに、在宅介護者の問題がわずかに出ています。
施設にいれば、誰が要援護者か把握可能なのですが、在宅介護については、
どこに誰が在宅介護されているのか、把握することすら極めて
困難だとのこと。
介護問題に詳しい、原発立地県の市民オンブズマンの関係者(義母を在宅介護中)に
話を聞きました。
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義母は、要介護認定3で、手足は動くが排泄は自分でできず、
家から出ることはできない。
例え避難所に連れて行っても、周りとトラブルを起こし、
避難所にいることはできないだろう。
最近、「福祉避難所」というものを設置しようとする動きがあるが、
そこへ避難するのは難しいのではないか。
仮に、近くの原発が爆発して、避難せよといわれた場合、
私は義母と家に残るしかないと考えている。
電気・水道・ガスが止まっても、家にいるしかない。
要介護認定をするのは自治体なので、だれが要介護者なのかは
自治体は把握しているが、どこに誰が在宅介護されているのかという
ことまでは自治体はほとんど把握していない。
介護保険サービスを使っている事業所しかわからない。
在宅介護の実態を調査しようにも、対象がわからない以上調査することすら
極めて難しいのが現状である。
家族など無償介護者の団体「ケアラー連盟」などに今後期待したい。
また、発達障害などは、周囲の状況が変わると症状が悪化することが多い。
本来、行政の責任の範囲のことを、近年「共助」という
言葉で責任逃れをしている傾向が極めて強い。
「医療・福祉問題研究会」という団体のニュースに、
「被災地における障害の人たちへの支援課題」という記事が載っていた。
在宅障害者を訪問しようとしたり、避難所での必要な
支援を把握しようとしたが、個人情報保護法に活動を阻まれた。
いったん避難所に避難した人の中には、耐え切れずに
自宅に戻って暮らした人もいた。
20-30キロ圏内の南相馬市には避難指示が出て、人口が7万人から
1万人に減った。自分で出て行かれない人のみ残った。
今回の震災で障害のある人の死亡率は2倍にのぼった。
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在宅介護者の避難の問題については、これまでほとんど
取り上げられず、今回の原発事故でも実際どうだったのかという
検証もほとんどないのではないかと思います。
ご意見いただければ幸いです。
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参考
国会事故調査委員会 避難者アンケート調査結果 まとめ
http://naiic.go.jp/pdf/naiic_sankou_jyuumin.pdf
消防庁 H23年度白書 第1章 災害の現況と課題
2 災害時要援護者の避難支援対策の推進
http://www.fdma.go.jp/html/hakusho/h23/h23/html/2-1-5c-2.html
内閣府 H24年度白書 「震災と障害者」④東日本大震災における障害者の死亡率
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h24hakusho/gaiyou/pdf/g1_4_clm04.pdf
平成24年7月12日 福島県南相馬市
南相馬市における震災関連死の原因と対応策
http://www.reconstruction.go.jp/topics/2-9.teisyutusiryou.pdf
ブログ 大脇道場 2011/7/19
死亡・不明の障害者が何名であるか未だにわからない 災害の中で障害ゆえに被った不利益は
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-category-117.html
2011/6/14 毎日新聞より
福島第1原発:要介護者など避難準備区域に330人
http://koshiro-m.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-a29c.html
一般社団法人 日本ケアラー連盟
http://carersjapan.com/
医療・福祉問題研究会
http://ihmk.sakura.ne.jp/
2011/7/14 被災地ボランティアに行って ~第一弾~
http://toyugenki.blog106.fc2.com/blog-entry-319.html
震災後1万人まで人口が減ったとき、市はとにかく南相馬を
離れるように市民に指示を出した。そして、いつでも逃げる
準備ができている人のみ南相馬に残っても良いと。なので、
残った1万人は当初、生活と交通手段を確保できていると
人たちだと思われていた。だが、実際にはまったくの逆で
交通手段を確保できた人、自力で避難できる人たちは
皆南相馬から出て行っていた。必然的に残された1万人は
逃げる術がない人たち、つまり高齢者や障害者、その家族で
あったのだ。さらに、残された障害者の内7割は施設や
ヘルパーに登録されていない人たちだった。この震災が
起こったことで浮き彫りになった南相馬の実態である。
このような大災害が起きないと実態が掴めない、そんな
福祉や行政の在り方に疑問と悲しさを感じた瞬間だった。