「明るい警察を実現する全国ネットワーク」代表の清水勉弁護士が、
「NHK記者の情報漏えいの何が問題か」という文書を発表しました。
http://www.shimizulaw.jp/
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2010/10/10 清水勉
NHK記者の情報漏えいの何が問題か
NHK記者が、警視庁の家宅捜索が入る前日、相撲協会側関係者(時津風部屋)
に「あす賭博関連で数ヶ所警察の捜索が入るようです」「NHKから聞いたとば
れたら大変なので他言無用でお願いします」というメールを送ったことが、捜査
情報の漏えいだとして、新聞、テレビが大騒ぎをしている。
東京新聞(10月9日朝刊)をみると、ふだん報道の自由を重視している服部孝
章・立教大教授、田島泰彦・上智大学教授、ジャーナリストの大谷昭宏さんも、
こぞって、「とんでもない!」と記者の行動に呆れている。
が、私はこの感想には疑問だ。
NHK記者は家宅捜索に入ることを他社の記者に聞いたという。そして、報道で
は、他社の記者が家宅捜索情報を事前に知っていたことを問題にしていない。
どういうことか。
大きな事件の家宅捜索では、警察官が集団になって建物に入っていくところを、
マスコミのカメラマンが取り囲んで撮影しているところが、テレビ映像として流
れたり、新聞に大きな写真として出ているのをよく見る。(大阪地検特捜部のガ
サ入れのときも同じでしたね。)
これはもちろん、マスコミのカメラマンたちがたまたま近くを通りかかったら家
宅捜索の現場だったので撮影した、などということではない。警視庁が事前にマ
スコミ各社に、いつどこでガサ入れをする、という告知をしているから、マスコ
ミ各社は特定の日時に特定の場所に入って撮影でき、全社揃って絵入りの報道が
できるのだ。
マスコミの記者は公務員ではない。国家公務員や地方公務員のような守秘義務が
ないのだから、本当に重要な捜査情報なら事前に告知するほうがどうかしている。
事前告知は、情報漏えいのリスクよりも、報道で目立ちたいというメリットを優
先している証拠だ。情報漏えいを問題にするのなら、マスコミに事前告知した警
察官こそ問題にすべきだ。それをしないのなら、情報漏えいと言っても、大した
問題ではないということだ。
マスコミはどこもこの点を視聴者・読者に説明していない。
識者たちは、当然、この構造を知っているはずだ。この点を問題にしないのは、
警察とマスコミが一体となっていることを当然の前提として、その裏切り者とし
てNHK記者の行動を問題にしているということにならないか。
そうではなく、情報漏えいのせいで捜査に支障が生じたというのなら、どのよう
な支障が生じたのかを、具体的に説明すべきだ。それなしに、「捜査情報の漏え
いだ!」とマスコミが大合唱するのは、捜査機関に対するマスコミの従属ぶりを
一層強化することに繋がらないだろうか?
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